コラム

外国人技能実習生と特定技能外国人の違い

日本の労働市場において、外国人労働者の受け入れは重要な課題となっています。

特に、「外国人技能実習制度」と「特定技能制度」は、外国人労働者の受け入れに関する主要な制度として注目されています。
これらの制度は、それぞれ異なる目的と特徴があります。

この記事では、これら二つの制度の違いやそれぞれの特徴・課題について考えていきます。

■外国人技能実習生とは

外国人技能実習制度は、1993年に創設された制度で、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」に基づいて運営されています。

この制度の主な目的は、開発途上国等の外国人を日本で一定期間(最長5年間)受け入れ、OJT(On-the-Job Training)を通じて技能を移転することです。
技能実習制度の主な特徴は以下の通りです:

  1. 目的は国際貢献(技能移転)
  2. 在留期間は最長5年
  3. 原則として転職不可
  4. 家族帯同は認められない

技能実習生の受け入れには、企業単独型団体監理型の2つのタイプがあります。

「企業単独型」は、日本の企業が海外の現地法人や合弁企業、取引先企業の常勤職員を直接受け入れるもので、「団体監理型」は、監理団体が会員企業での技能実習をあっせんし、適切な運営がなされるよう指導・監督を実施します。

また、技能実習制度は、技能実習1号、2号、3号の3段階に分かれています。

技能実習1号は入国初年度に付与される在留資格で、在留期間は1年以内です。
技能実習2号は、試験に合格して1号から移行することで、さらに2年間の在留資格が認められます。
技能実習3号は、所定の技能評価試験に合格することで更に2年間の在留資格が得られます。


出典:厚生労働省:技能実習制度の仕組み(P5)

■特定技能外国人とは

特定技能制度は、2019年4月に開始された在留資格制度で、日本国内の深刻な人手不足に対応するために導入されました。

この制度は、特定の産業分野(16職種)において、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れることを目的としています。

特定技能制度の主な特徴は以下の通りです。

  1. 日本国内の人手不足を解消することを目的としている
  2. 在留期間は特定技能1号が最長5年、2号は更新回数の上限なし
  3. 同一分野内での転職可能
  4. 特定技能2号は家族帯同可能

特定技能には、特定技能1号特定技能2号の2種類があります。

特定技能1号は、相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。
一方、特定技能2号は、熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。

特定技能1号の特徴:

  • 在留期間:通算で上限5年(1年・6カ月・4カ月ごとの更新)
  • 家族帯同:認められていない
  • 受入れる企業または登録支援機関によるサポートが義務
  • 単純労働を含む幅広い業務に従事可能
  • 技能実習から在留資格を変更(移行)することができる
  • 日本語レベル:試験で確認(日本語能力検定のN4以上)

特定技能2号の特徴:

  • 在留期間:更新の上限なし(3年・1年・6カ月ごとの更新)
  • 家族帯同:要件を満たせば子や配偶者の帯同は認められる
  • 受入れる企業または登録支援機関によるサポート:不要
  • 単純労働を含む幅広い業務に従事可能
  • 永住権の取得:要件を満たせる可能性がある
  • 日本語レベル:分野によって異なる(試験での確認が不要)

即戦力として期待される、特定技能外国人

特定技能外国人とは、日本の深刻な人手不足に対応するために導入された在留資格を持つ外国人労働者のことです。
技能実習生と比較すると、より高度な技能と日本語能力が求められる点が大きな特徴です。
具体的には、特定技能外国人は以下のような特徴を持っています。

1. 技能水準:

特定技能外国人は、相当程度の知識または経験を必要とする技能を有していることが求められます。
これは技能実習生よりも高い水準であり、即戦力として働くことが期待されています。

2. 日本語能力:

特定技能外国人には、日本語能力試験N4レベル以上またはそれに準ずる日本語能力が求められます。
これは、技能実習生(介護職種を除く)には入国時の日本語要件がないのと比べて、より高い日本語能力が要求されています。

3. 試験:

特定技能外国人になるためには、「特定技能評価試験」と「日本語能力試験」の両方に合格する必要があります。
これは技能実習生には課されていない要件です。

4. 職種の範囲:

特定技能外国人が就労できる分野は、人手不足が深刻な14の特定産業分野に限定されています。
一方、技能実習生は91職種167作業(2024年9月時点)と、より広い範囲で受け入れが可能です。

5. 転職の自由:

特定技能外国人は同一分野内での転職が可能ですが、技能実習生は原則として転職が認められていません。

6. 在留期間:

特定技能1号の在留期間は最長5年ですが、特定技能2号に移行すれば更新回数の上限がなく、長期的な就労が可能です。
技能実習生の場合、最長でも5年間の在留期間となります。

これらの違いから、特定技能外国人は技能実習生と比べ、より高度な技能と日本語能力を持ち、即戦力として日本の労働市場で活躍することが期待されています。

また、より長期的な就労や柔軟な雇用形態が可能であるため、日本の人手不足解消により直接的に貢献する制度として位置づけられています。

■外国人技能実習生と特定技能外国人の違い

1. 制度の目的:

技能実習制度は国際貢献(技能移転)を目的としているのに対し、特定技能制度は人手不足解消を目的としています。
技能実習制度は、あくまでも外国人の人材育成による国際貢献のためであり、労働力として扱う制度ではありません。
一方、特定技能制度は、国内の人材不足を外国人材によって補うためのものです。

2. 在留期間:

技能実習制度は最長5年間ですが、特定技能1号も最長5年間です。
ただし、特定技能2号は更新回数の上限がなく、要件を満たせば永住権の取得も可能です。

3. 転職の可否:

技能実習生は原則として転職が認められていませんが、特定技能外国人は同一分野内での転職が可能です。

4. 家族帯同:

技能実習生は家族帯同が認められていませんが、特定技能2号は要件を満たせば家族帯同が可能です。

5. 技能水準:

技能実習生は入国時の技能試験がありませんが(介護職種のみ入国時N4レベルの日本語能力要件あり)、特定技能外国人は相当程度の知識又は経験が必要で、技能水準と日本語能力水準を試験等で確認します。

6. 対象分野:

技能実習制度は91職種167作業が対象ですが、特定技能制度は人手不足が深刻な14分野(特定産業分野)が対象です。

7. 受入れ機関の人数枠:

技能実習制度では常勤職員の総数に応じた人数枠がありますが、特定技能制度では人数枠がありません(介護分野、建設分野を除く)

8. 支援体制:

技能実習制度では監理団体が支援を行いますが、特定技能制度では特定技能1号の外国人に対して登録支援機関が支援を行います

■それぞれの特徴と今後の見通し

人数推移などの変化

1. 技能実習生:

2024年6月末時点で約41万人の技能実習生が日本に在留しています。
コロナ禍前の2019年末には約41万人だったものの、入国制限の影響で一時減少しました。
しかし、入国制限緩和後、再び増加傾向にあります。

2. 特定技能外国人:

2024年6月末時点で約25万人の特定技能外国人が日本に在留しています
制度開始以来、着実に増加しており、特に介護分野での増加が顕著です。

出典:厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況より/在留資格別外国人労働者数の推移(P2・上表)

特定技能外国人の増加要因としては、以下が挙げられます。

  • 国内企業の人手不足の加速
  • 国内外での試験回数の充実
  • 技能実習生の在留資格移行
  • 人手不足の業界において柔軟に幅広く就労が可能

産業分野別では、製造業が最も多く約48.5万人(全体の26.6%)、次いでサービス業(他に分類されないもの)が約29.5万人(全体の16.2%)、卸売・小売業が約23.7万人(全体の13.1%)となっています。

出典:厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況より/産業別外国人労働者数の割合(P8)

■2つの制度に共通する見通しやそれぞれの特徴

1. 人手不足対応:

両制度とも、日本の深刻な人手不足に対応する重要な役割を果たしています。
特に特定技能制度は、より直接的に労働力確保を目的としているため、今後さらなる拡大が見込まれます。

2. 制度の見直し:

技能実習制度については、人権侵害や労働環境の問題が指摘されており、制度の見直しや改善が進められています。
一方、特定技能制度は比較的新しい制度であり、今後も運用方法の改善や対象分野の拡大が検討される可能性があります。

3. キャリアパス:

特定技能制度は、技能実習からのキャリアアップの道筋として機能しています。
技能実習2号を修了した外国人が特定技能1号に移行するケースが増えており、この傾向は今後も続くと予想されます。
ただし、すべての技能実習の職種・作業が特定技能への移行対象となっているわけではありません。

4. 地域経済への貢献:

両制度とも、地方の人手不足解消に貢献しています。
特に特定技能制度は、より幅広い分野で活用できるため、地域経済の活性化に寄与することが期待されています。

5. 共生社会の実現:

外国人労働者の増加に伴い、日本社会における多文化共生の重要性が高まっています。
これらの制度を通じて来日する外国人材を受け入れるための体制整備や、地域社会との交流促進が今後の課題となるでしょう。

6. 永住権取得の可能性:

特定技能2号では、要件を満たせば永住権の取得が可能です。
これは、技能実習制度にはない特徴であり、長期的な人材確保の観点から重要です。

7. 日本語能力の重要性:

両制度とも、日本語能力が重要視されています。
特に特定技能制度では、日本語能力試験N4レベル以上が求められており、外国人材の日本社会への適応と円滑なコミュニケーションを促進しています。

8. 受入れ企業の責任:

両制度とも、受入れ企業に対して適切な労働環境の提供や支援体制の整備を求めています。
特に特定技能制度では、1号の外国人に対して受入れ企業または登録支援機関による支援の実施が義務付けられています。

結論として、外国人技能実習制度と特定技能制度は、それぞれ異なる目的と特徴を持ちながら、人材が不足する日本の労働市場に重要な役割を果たしています。

技能実習制度は国際貢献を主な目的としているのに対し、特定技能制度は直接的に人手不足解消を目指している点に違いはありますが、両制度とも、日本の労働市場と社会に大きな影響を与えており、今後も重要な役割を果たすことが予想されています。
それと同時に、外国人労働者の権利保護や適切な労働環境の確保、そして日本社会との調和ある共生を実現するための取り組みが求められています。
今後は、両制度の長所を活かしつつ、課題を解決していくことで、より良い外国人材の受け入れと労働力・技術の活用が可能になるでしょう。

受け入れ企業だけでなく、日本社会全体で、これらの制度を通じて来日する外国人材を温かく迎え入れ、共に成長していく姿勢が重要となります。

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