■技能実習生の中でも最多のベトナム人
ベトナム人技能実習生の人数と推移は、日本の外国人労働者受け入れ政策の変遷を如実に反映しています。
2010年代から急増し始めたベトナム人技能実習生は、2018年に約14万人だったのが、翌2019年には約19万人へと大幅に増加しました。
この急増傾向は、日本の恒常的な人手不足や、2017年の技能実習制度改正による対象職種の追加、受け入れ枠の拡大、最長在留期間の延長などが背景にあります。
2021年末には、ベトナム人技能実習生が全体の58.1%を占めるまでになり、その存在感は一層強まりました。
2022年12月時点では約17万人となり、技能実習生全体の54%を占めています。
さらに、2022年10月末の統計では、ベトナム人技能実習生は約18万人で最多となっており、それ以下を大きく引き離しています。
出典:厚生労働省 令和3年度外国人技能実習機構業務統計 概要/国籍・地域別内訳(構成比)(P21)
この傾向は、外国人労働者全体でも同様で、2022年10月末時点でベトナム人は外国人労働者全体の25.4%(462,384人)を占め、最多となっています。
これは、かつて多数を占めていた中国人技能実習生の減少に伴う代替や、日本とベトナム政府間の協力関係の強化などが要因として挙げられます。
しかし、最近の傾向として、ベトナムの経済発展や教育水準の向上により、技能実習希望者の増加率が鈍化しつつあります。
これは、ベトナム国内の雇用機会の増加や、他の外国人労働者の受け入れ拡大などが影響していると考えられます。
このように、ベトナム人技能実習生の数は急増した後、近年はやや増加率が鈍化しているものの、今もなお技能実習生の中で最大のグループを形成しています。
今後は、ベトナムの経済状況や日本の労働市場の需要、さらには二国間の政策変更などによって、その推移が変化する可能性もあります。
日本の労働市場において重要な役割を果たすベトナム人技能実習生の動向は、今後も注目されるでしょう。
彼らの受け入れ体制の整備や、より効果的な技能習得プログラムの開発など、両国にとって有益な関係を築くための取り組みが求められています。
■ベトナム人の特徴は?勤勉で協調性の高い人が多い
ベトナム人技能実習生は、日本の労働市場で重要な役割を果たしています。
彼らの勤勉さと学習意欲の高さが評価される一方で、文化の違いによる課題も存在します。
本項目では、ベトナム人技能実習生の一般的な特徴や性格、仕事への姿勢、コミュニケーションの特徴などを詳しく解説します。
これらの理解を深めることで、より効果的な受け入れと、円滑な職場・就業環境の構築につながるでしょう。
勤勉さと努力家の気質:
ベトナム人技能実習生は、非常に勤勉で、与えられた仕事に真面目に取り組む姿勢が高く評価されています。
新しい技術や知識を学ぶために努力を惜しまない傾向があります。
高い学習意欲:
多くのベトナム人技能実習生は、日本での経験を通じて新しいスキルや知識を習得し、将来の自国での活躍に活かそうという意識が強いです。
そのため、仕事を覚えるのも比較的早いのが特徴です。
協調性:
ベトナム人はチームワークを重視し、協調性を発揮する傾向があります。
互いに助け合いながら作業を進めることで、効率的かつ円滑に仕事を進めることができます。
文化への適応力:
ベトナムと日本の文化には違いがありますが、ベトナム人技能実習生は日本の文化や習慣に比較的早く適応する能力があります。
礼儀正しさや規律を守る姿勢も評価されています。
■ベトナム人技能実習生とうまくコミュニケーションをするポイント
ベトナム人技能実習生との効果的なコミュニケーションは、職場の生産性向上と相互理解の促進に不可欠。
言語や文化の違いを乗り越え、円滑な意思疎通を図るには、いくつかの重要なポイントがあります。
本項目では、日本語の使い方や非言語コミュニケーション、文化的配慮など、ベトナム人技能実習生とのコミュニケーションを成功させるための具体的な方策を紹介します。
以下の項目を意識することによって、より協調的で生産的な職場環境の構築につながるでしょう。
1. 丁寧な言葉遣いを心がける
例:
• 「これをやって」→「これをやってください」
• 「分かった?」→「分かりましたか?」
• 「持ってきて」→「持ってきていただけますか?」
2. ゆっくりと明確に話す
例:
• 通常の会話速度の約70%のスピードで話す
• 文と文の間に1秒程度の間を置く
• 重要な単語を強調して発音する
3. 視覚的な補助を活用する
例:
• 作業手順をイラスト付きのフローチャートで説明
• 安全標識や注意事項を絵文字や簡単な図で表現
• 製品の組立手順を写真付きのマニュアルで提示
4. シンプルな表現を使う
例:
• 「納期厳守」→「決められた日までに必ず終わらせてください」
• 「品質管理」→「製品に問題がないか確認する」
• 「コスト削減」→「お金をかけずに作る方法を考える」
5. 文化の違いを理解し尊重する
例:
• ベトナムの旧正月(テト)休暇の重要性を理解し、休暇取得に配慮する
• お茶やコーヒー休憩の習慣を取り入れ、コミュニケーションの機会を増やす
• ベトナム料理の日を設けるなど、食文化の交流を促進する
6. 言語学習のサポートを提供する
例:
• 週1回、1時間の日本語レッスンを就業時間内に組み込む
• 日本語と母国語の対訳付き業務マニュアルを作成する
• 「今日の日本語」コーナーを設け、毎日新しい日本語表現を紹介する
7. 文化交流の機会を設ける
例:
• 年2回の文化交流イベントを開催(例:花見、忘年会)
• 日本人従業員とベトナム人技能実習生のペアを組み、互いの言語や文化を教え合う「バディシステム」の導入
• 地域の国際交流イベントへの参加を奨励し、休日に一緒に参加する
これらの具体的な方法や例を実践することで、ベトナム人技能実習生とのコミュニケーションがより円滑になり、相互理解が深まることが期待できます。
また、これらの取り組みは、技能実習生の日本での生活や仕事への適応を手助けし、より効果的な技能習得も期待できます。
■技能実習生をはじめとしたベトナム人労働者はこれからも増加する可能性がある
ベトナム人が技能実習生として日本を選ぶ理由は多岐にわたります。
まず、自国と比較し日本の高い給与水準と、日本で習得した技術による将来のキャリアアップの可能性が大きな経済的魅力となっています。
また、日本の先進的な技術や技能を習得し、帰国後に活かせる点も重要です。
文化面では、ベトナムの親日感情や日本のポップカルチャーへの親しみが影響しています。
日本の漫画などのカルチャーは、ベトナムでも人気が高く、彼らが日本に興味を持つきっかけの1つともなっています。
さらに、日本の安全で質の高い生活環境や充実した社会保障制度も魅力の一つです。
国際経験を積み、日本語を習得できることも、将来のキャリア形成に有利に働くと考えられています。
これらの要因が複合的に作用し、多くのベトナム人が技能実習生として日本を選択しており、今後もその傾向は続くと言えるでしょう。
私たち日本人も、勤勉で努力家な彼らと一緒に働くにあたり、文化や言葉の違いを理解しつつ、双方が成長できるように支えあおうとする姿勢で接していきたいですね。