外国人労働者の中でも多くの割合を占める、外国人技能実習生。
外国人労働者を見かける機会も増え、なかには同じ職場で働いているという人もいるのではないでしょうか。
この記事では、外国人技能実習生の実態をデータとともにご紹介していきます。
■外国人技能実習生の受け入れ状況
外国人技能実習生は、どのくらい日本で活躍しているのでしょうか。
データをもとに、現状とこれからの展望について考えていきましょう。
▼国籍・地域別
出典:厚生労働省「令和3年度外国人技能実習機構業務統計 概要」P4 国籍・地域別 計画認定件数(構成比)
外国人技能実習生の受け入れ状況を国・地域別に見ると、ベトナムからの実習生が圧倒的に多く、全体の53.0%を占めています。
これは90,753件の認定件数に相当し、前年度の56.1%から若干減少しているものの、依然として半数以上を維持しています。
次いで中国が13.3%(22,879件)、インドネシアが12.6%(21,651件)と続いており、この上位3か国で全体の約80%を占めています。
全体の過半数を占めるベトナム人技能実習生。
人数が多い理由として、二国間の関係性、経済的・社会的要因、文化的適応性があげられます。
日本とベトナムの間では、2017年より、受け入れ制度に関する取り決め(「日本国法務省・外務省・厚生労働省とベトナム国労働・傷病兵・社会問題省との間の技能実習に関する協力覚書(MOC)」)がなされています。
両国政府は、派遣と受け入れをスムーズに行うための取り決めをしており、ベトナム国内には多数の送り出し機関が設立され、実習希望のベトナム人と日本の受け入れ企業のマッチングが効率的に行われています。
経済的・社会的要因としては、ベトナムの人口構造と経済発展があげられます。
ベトナムは若年層の人口が多く、海外で働く意欲のある労働力が豊富です。20代の実習生も多くいます。
また、ベトナムの急速な経済成長に伴い、現地の若者たちは、日本で習得した技術を帰国後に生かすことでより良い職・収入を得たいという意欲が高まっているといえます。
そして、文化的適応性も重要な要因と言えるでしょう。
実は、ベトナム人実習生は、日本の職場環境に適応しやすいと言われています。
彼らの勤勉さや規律正しさは日本の雇用主から高く評価されており、日本語の習得に対する意欲も高いとされています。
こういった複数の要因が、ベトナム人技能実習生の受け入れの多さにつながっていると考えられます。
▼年齢別・男女別
出典:厚生労働省「令和3年度外国人技能実習機構業務統計 概要」P2 年齢別 計画認定件数(構成比)
出典:厚生労働省「令和3年度外国人技能実習機構業務統計 概要」P2 男女別計画認定件数(構成比)
次に外国人技能実習生の年齢別・性別の構成比を見てみましょう。
性別については、男性:女性がおよそ6:4と男性が少し多い傾向にありますが、女性の実習生も多いことが分かります。
一方、年齢別に見てみると、30歳未満の若年層が75%以上を占めており、いわゆる若手の実習生が大部分を占めていることが分かるでしょう。
10代・20代といった若い世代の技能実習生が多いことにはいくつかの理由があります。
まず、実習生本人の適応力や体力的要素も理由の1つ。
若い世代は一般的に新しい環境や言語への適応力が高く、新たな技能の習得にも積極的です。
また、特に製造業や建設業など多くの技能実習の職種には、体力を必要とする作業が含まれているため、体力のある若い世代はこうした作業に適しているといえるでしょう。
受け入れ企業側も、長期的な視点で技能を習得し、将来的に母国と日本をつなぐ人材となることを期待していることから若い世代を好む傾向にあります。
習得した技術を母国の発展に生かすことはこの技能実習制度の目的でもあり、若い世代にこうした期待をすることは送り出し国・受け入れ国(日本)の双方にとって、ごく自然といえます。
また、送り出し国側の事情として、若年層の失業率の高さもあげられます。
国内に仕事がない・失業した若者たちにとって、日本で働くということは選択肢の1つであり、帰国後に母国で仕事を得るための手段であるといえるでしょう。
▼職種別
出典:厚生労働省「令和3年度外国人技能実習機構業務統計 概要」P3 職種別 計画認定件数(構成比)
職種別に技能実習生の受け入れ先を見てみると、実にさまざまな職種で受け入れられていることが分かります。
特に建設業や食品製造関係が多く、次いで機械・金属関係となっています。
また、近年では介護業界など(その他項目内)で活躍する技能実習生も増えつつあります。
▼都道府県別
出典:厚生労働省「令和3年度外国人技能実習機構業務統計 概要」P8 令和 3 年度 都道府県別計画認定件数(構成比)
外国人技能実習生は、日本全国で受け入れられていますが、特に多いのは愛知県です。
愛知県の受け入れが多い理由は、自動車産業を中心とした製造業が盛んで、トヨタ自動車をはじめとする大手メーカーとその関連企業が多数集積していることがあげられるでしょう。
これらの企業では、生産ラインや部品製造などで技能実習生の需要が高くなっていて、技能実習生側もこうした世界に通じる日本の技術を学びたいと考えていることでしょう。
また、愛知県は日本有数の農業県でもあり、農業分野での技能実習生の受入れも多くあります。
愛知県と同様に自動車産業の盛んな広島県も、技能実習生の受け入れが多いエリアの1つ。
広島県は、造船業も盛んで、これらの製造業で技能実習生を数多く受け入れています。
また、野菜や果物の生産量の多い茨城県も、農業分野での技能実習生の受け入れが多くあります。
このようにエリアごとに受け入れの人数に差はありますが、日本国内のあらゆる場所で日本の技術を学ぶために働いている技能実習生が多くいることが分かります。
■外国人技能実習生はなぜ日本で働くことを選択するのか
現在の日本では、技能実習生をはじめとした多くの外国人労働者がいます。
彼らが就労先として日本を選ぶ理由にはどういったことがあげられるのでしょうか。
ここまで何度か触れてきたように、日本での技能実習は、高度な技術や知識を習得する貴重な機会となります。
特に日本の製造業、建設業、農業などの分野は世界的に高い評価を受けており、これらの産業で実践的な経験を積むことは、帰国後の就職に大きな強みとなります。
例えば、自動車製造業での実習経験は、自国の自動車産業で働く際に大きなアドバンテージとなるでしょう。
また、経済的な面でも、日本での就労は母国よりも高い収入を得られる可能性が高いといえます。
例えば、ベトナムの平均月収が約3万円程度であるのに対し、日本での技能実習生の平均月収は15万円以上となることもあります。
この収入の差は、技能実習生自身や彼らの家族にとって大きな魅力の1つといえます。
また、日本での生活経験自体が魅力となっています。
日本の文化や生活様式を直接体験し、日本語を習得することは、グローバル化が進む現代社会において貴重な経験となります。
例えば、日本の「おもてなし」の精神や時間厳守の文化を学ぶことは、帰国後のビジネスシーンでも活かせる重要なスキルとなります。
さらに、技能実習制度を通じて日本で働くことは、将来的に日本での長期就労や永住の可能性を開くステップとなる場合もあります。
技能実習を終えた後、特定技能制度などを通じてより長期的に日本で働くことを考える技能実習生も少なくありません。
このように、外国人技能実習生にとって日本での実習は、技能習得、経済的利益、文化体験、将来のキャリア展望など、多くの魅力があります。