コラム

技能実習生の受け入れ時に知っておきたい、監理団体のこと

監理団体とは、外国人技能実習制度において重要な役割を果たす組織です。
2023年時点で3632件の監理団体があり、特定管理事業:1723件、一般管理事業:1909件となっています。
監理団体は、技能実習生の受入れから帰国までの一貫した支援を行い、実習の適正な実施を確保する責任を負っています。
主な役割には、実習実施者(受入企業等)に対する定期的な監査、技能実習生からの相談対応や生活支援、技能実習計画の作成支援などがあります。
監理団体には「特定監理団体」と「一般監理団体」の2種類があり、それぞれ異なる基準と責任を持ちます。
これらの団体は、技能実習制度の適正な運用と技能実習生の権利保護において重要な役割を果たしており、外国人技能実習機構の許可を得て活動しています。

■監理団体とは

▼監理団体の種類

監理団体とは、技能実習生の受け入れおよび監理を行うために国から許可を受けた団体です。許可される事業内容は「一般監理事業」と「特定監理事業」に分類されます。

特定監理事業:
特定監理事業は、技能実習1号および2号のみを対象とした監理を行う事業です。
これは非営利団体が技能実習生を受け入れ、傘下の企業で実習を実施するモデルです。

一般監理事業:
一般監理事業は、特定監理事業に加え、技能実習3号まで監理できる事業です。
3号は、優良な監理団体のみが行えるもので、外国人労働者を5年間実習させることが可能です。

▼一般監理事業と特定監理事業の違い

受け入れ可能な技能実習生の区分:
特定監理事業:技能実習1号と2号のみを監理可能
一般監理事業:技能実習1号~3号までを監理可能

許可の有効期間:
特定監理事業:3年または5年
一般監理事業:5年または7年

受け入れ可能人数枠:
特定監理事業:1号は基本人数枠、2号は基本人数枠の2倍
一般監理事業:1号は基本人数枠、2号は基本人数枠の2倍、3号は基本人数枠の6倍

▼監理団体の許可基準

  • 監理団体は次の基準を満たす必要があります。
    ・非営利法人であること
    ・定期的な監査を実施すること(3か月に1回以上)
    ・実習生への相談対応を行うこと
    ・財産的基礎があること
    ・個人情報の管理が適切であること
    ・基準を満たす外国の送出機関と契約していること
    ・監理責任者の適切な配置がされていること

▼特記事項

一般監理事業では、優良団体として認められるために追加要件を満たす必要があります。
特に、過去の違反や改善命令を受けていないことが条件です。
これにより、監理団体は技能実習制度を適正に運用する責任を負い、実習生が適切に技能を習得できる環境を提供することが求められています。

▼職種別監理団体許可件数(2022年度)

出典:厚生労働省「令和3年度外国人技能実習機構業務統計 概要」P14 職種別監理団体許可件数

建設関係が多い理由は、日本の建設業界が直面している課題と、技能実習制度の特性が合致していることがあげられるでしょう。
まず、日本の建設業界は深刻な労働力不足に悩まされています。
高齢化や若者の建設業離れにより、国内の労働力だけでは需要を満たせない状況が続いています。
近年では、大阪万博や災害復興などの人手不足も問題となりました。
こうした状況から、建設関連業では、外国人技能実習生の労働力が不可欠となっています。
また、日本の建設技術は多くの国で需要があり、技能実習生が帰国後にも活用できる可能性が高いという点で、技能実習制度の本来の目的である「技能移転」に合致しています。
さらに、建設業の多くの作業は比較的短期間で基本的な技能を習得できるため、最長5年間という技能実習制度の期間設定にも適しています。
建設業はプロジェクトベースの仕事が多いという特性も、技能実習生の受入れや帰国のタイミングを調整しやすいという点でメリットがあります。

▼都道府県別監理団体許可件数(2022年度)

出典:厚生労働省「令和3年度外国人技能実習機構業務統計 概要」P16 都道府県別監理団体許可件数 構成比

この表からも分かるように、愛知県、大阪府、東京都は特に監理団体が多いエリアです。
愛知県は、自動車産業を中心とした製造業が盛んであり、多くの企業が技能実習生を必要としています。
トヨタ自動車をはじめとする大手メーカーの存在が、技能実習生の受入れを実施しています。
また、関連する中小企業も多く、労働力不足を補うために技能実習生を受け入れる傾向があります。
また、実習生も母国で通用する高い技術を学ぶために、このエリアを選択していると言えるでしょう。
また、大阪府も監理団体が多い地域です。
関西経済の中心地である大阪は、多様な産業が集積しており、特に製造業や建設業での技能実習生の需要が高いです。
中小企業が多く、技能実習生を受け入れることで人手不足を解消したい企業と、技術を習得したい実習生の需要がマッチしているエリアであると言えるでしょう。
東京都は、日本の経済・ビジネスの中心地であり、監理団体数が最も多い都道府県の一つです。
多くの企業や団体が本社を置いているため、さまざまな分野で技能実習生の需要があります。
また、国際的な人材受入れに関する情報やリソースも豊富で、外国人労働者に対する理解が進んでいることも、技能実習生の働きやすさや環境にプラスの要因となっています。

さらに、これらのエリアに共通しているのは、地理的要因。
港湾や空港など国際的な人の往来が多い地域では、外国人材の受入れに関するノウハウが蓄積されていると言えるでしょう。
こういった複数の要因が相互に作用し合い、特定の地域に監理団体が集中する結果となっているのです。

■どのような監理団体を選べばいいのか

▼監理団体の選び方と注意点

監理団体を選ぶ際には、複数のポイントに注意する必要があります。
まず、外国人技能実習機構からの正式な許可を確認することが不可欠です。
これは、技能実習生の受入れを行う上での基本的な要件となります。
次に、団体の実績と経験を評価しましょう。
長年の経験を持つ団体は、技能実習生の受入れや支援に関する豊富なノウハウを持っていることが多いです。
例えば、過去5年間で100名以上の技能実習生を受け入れた実績がある団体は、さまざまな状況に対応できる可能性が高いでしょう。
自社の業種や必要とする技能に対応できる監理団体を選ぶことも重要です。
例えば、製造業であれば、その分野での技能実習生の受入れ経験が豊富な団体を選ぶべきです。
充実したサポート体制も重要な選択基準です。
技能実習生の生活支援や日本語教育、24時間対応の相談窓口など、包括的なサポートを提供する団体を選びましょう。
コンプライアンス体制も見逃せません。
技能実習制度に関する法令や規則を十分に理解し、過去に重大な違反歴がない団体を選ぶことが大切です。
費用の透明性も重要な要素です。
監理費用や各種サービスの料金体系が明確で、不当に高額な費用を請求しない団体を選びましょう。
費用は監理団体によって異なりますが、安ければ良いというものでもないため、その費用の内訳を確認するようにしてください。
コミュニケーションのしやすさも考慮すべきポイントです。
質問や相談に対して迅速かつ丁寧に対応できる団体が望ましいです。
また、必要とする国からの技能実習生を受け入れられるか、送出し国との良好な関係を持っているかも確認しましょう。
例えば、ベトナムからの技能実習生を希望する場合、ベトナムの送出し機関と強いつながりを持つ監理団体を選ぶことが有効です。
他の受入れ企業からの評判や口コミも参考になります。
業界団体や同業他社からの情報収集も有効な手段です。
最後に、可能であれば監理団体との直接の面談や事務所訪問を行い、団体の雰囲気や対応を直接確認することをおすすめします。
これにより、書面だけでは分からない団体の特徴や姿勢を把握することができます。

これらのポイントを総合的に比較検討するために、複数の監理団体へ問い合わせを行い、それぞれの特徴を確認しながら、自社のニーズに最も適した監理団体を選択することが重要です。
尚、監理団体は途中で変更することもできるため、技能実習の実施中に不安なことがあった場合は、変更することも検討してください。

最新情報

TOP