プリントを使って、物の名前を覚える授業の様子です。入国後講習では基礎的な日本語を重点的に教えているため、難しい漢字までは扱いません。今回の授業プリントでも漢字までは覚えさせていませんが、名詞の場合は外来語がたくさんあります。どの言葉にカタカナを使うべきか、その区別を教えるのは意外と難しいものです。
たとえば、「しまうま」はひらがなで書くべきか、それともカタカナで「シマウマ」と書くように教えるべきか、もしくはどちらでもよいのか。「しま」という単語も「うま」という単語も、どちらも和語であり、外国語の発音を借りてカタカナ表記をする外来語とは異なります。しかし、外国に生息する動物だからこそ、カタカナで書くのが良いのでしょうか。
外来語のカタカナ表記については、平成3年に告示・訓令が出されており、使い方の目安が示されています。
(参考リンク:外来語の表記(文化庁))
ここでは「外来語や外国の地名・人名を片仮名で書き表す場合」について扱われています。外来語をカタカナ表記する際に、どの文字を使うのがよいかという資料です。
では、そもそも「外来語」の定義は何か?という疑問が湧きます。外来語とは何か、どの言葉が外来語か、という資料やリストが、内閣や文科省・文化庁などから公的に・明確に示されたものはおそらく存在しません。
外来語は、広い意味では「外国から入ってきた言葉」と定義できると思いますが、もともと古来の日本では中国や朝鮮半島から膨大な単語が伝わり今に至るため、現在の日本語は外来語だらけです。狭い意味では、「江戸時代や、主には明治時代以降に欧米から入ってきた言葉」とも言えます。しかし、この「狭い意味」の外来語の場合にはカタカナを使いましょうというのも、説明としてはまだ不十分です。
表記の慣習と日本語の多様性
動物の「猫」は外来語ではありません。漢字、あるいは「ねこ」とひらがなで書くのが普通です。しかし、「ネコ科動物」というときにはカタカナを用いるのが一般的です。動物や植物などは学術的な場面でカタカナを使う慣習があります。学術的とまでは言えないレベルであっても、図鑑や説明書きなどではカタカナを使っている場面をよく目にします。
では、最初に戻って「しまうま」はどうでしょうか。結論としては、当センターのような技能実習生に日本語の基礎を教える立場からすると、ひらがな・カタカナの「どちらでもよい」としています。
日本語は多様性に富んだ言語です。言葉の由来や使用場面、意図が含まれる場合などによって、使い分けができてしまいます。相手にどう伝えたいか、どんな印象で伝えたいかによって、あえて表記を変えることもあります。「広島」という都市名を「ヒロシマ」と書くと、歴史的、世界的な使われ方の場面として伝わります。「寿司」を「すし」や「スシ」と書いても特に問題はありません。
日本では同じ単語でも、ひらがな・カタカナ・漢字・アルファベットなど、様々な形で書かれることがあります。日本での生活の中で、色々なケースを目にすることになります。「絶対に」という明確なルールに必ずしも従っている訳ではないという、日本語には柔軟性があるということも、教えておくのが良いと考えています。
